「猫になって街を歩く」――ただそれだけの体験が、これほどまでに心を掴むとは思いませんでした。『Stray』は、フランスのBlueTwelve Studioが手がけた、一匹の野良猫を操作してサイバーシティを冒険するアドベンチャーです。圧倒的に好評(好評率97%・レビュー約17.6万件/2026年8月時点)という評価が示すとおり、ジャンルを超えて愛される一作です。

- 総合評価:圧倒的に好評(92/100)
- 最大の魅力:猫の挙動の徹底した作り込み
- 気になる点:クリア6〜10時間とボリュームは控えめ
- 買い時:猫好き・雰囲気重視のアドベンチャー好きは必携(目安:6〜10時間)
『Stray』は、家族とはぐれて見知らぬ地下都市に迷い込んだ一匹の野良猫が、故郷へ帰るために旅をするアドベンチャーゲームです。人間が姿を消し、ロボットたちが暮らす朽ちたサイバーシティを舞台に、相棒のドローン「B-12」とともに謎を解き明かしていきます。
「猫である」という体験そのものを徹底的に作り込んだ本作は、短いながらも濃密で、プレイ後に温かい余韻を残してくれます。
▶1. 「猫らしさ」の徹底した作り込み
本作最大の魅力は、猫の挙動の説得力です。狭い隙間をすり抜け、高い場所へ飛び移り、爪を研ぎ、丸くなって眠る。ボタン一つで「ニャー」と鳴けるなど、猫好きの心をくすぐる要素が満載で、ただ街を歩いているだけで楽しい体験になっています。
▶2. 美しく退廃的なサイバーシティ
ネオンと湿気に満ちた退廃的なサイバーパンク都市の作り込みは見事です。狭い路地、雑多な看板、ロボットたちの暮らし――どこを切り取っても画になる世界が広がっています。

▶3. 程よい謎解きと心に残る物語
探索の中で軽い謎解きやちょっとしたアクションを挟みつつ、ロボットたちとの交流を通じて静かに紡がれる物語が心に残ります。難解すぎず、誰でも最後まで楽しめる絶妙なバランスです。
本作の評価は「猫の再現度が高い」で語られがちですが、実績の条件を見ると、猫らしい行動そのものがゲームの中身として設計されていることが分かります(いずれも2026年8月時点)。
| 実績 | 条件 | 達成率 |
|---|---|---|
| 好奇心は猫をも殺す | 紙袋を被る | 70.0% |
| 猫の運動会 | 500回ジャンプする | 65.1% |
| おしゃべり猫 | 100回ニャーと鳴く | 64.9% |
| キャットストロフィ | ロボットと共に麻雀をする | 35.4% |
| 猫の親友 | ロボット5体にすりすりする | 25.9% |
| テレキャット | 全TVチャンネルを見る | 14.8% |
| 充実した日 | 1時間以上寝る | 5.5% |
「紙袋を被る」が70.0%、「麻雀をする」が35.4%、「1時間以上寝る」が5.5%。こうした行動に実績が割り当てられているという事実が、この作品が何を大事にしているかを端的に示しています。
つまり**「猫になる」は雰囲気づくりではなく、遊びの本体**です。目的地へ最短で向かう遊び方をすると、この部分がまるごと手元に残りません。
▶「何もしない」ことにまで実績が付いている
上の表でとくに目を引くのが**「1時間以上寝る」(5.5%)と「全TVチャンネルを見る」(14.8%)です。どちらも進行に一切寄与しない行動**で、それでも実績として用意されています。
これは本作の設計思想がよく出ている部分です。多くのゲームは「進める行動」に報酬を置きますが、本作は立ち止まること、寄り道すること、眺めることにも意味を与えている。猫が実際にやること——寝る、テレビを眺める、袋に入る——を再現の対象にしているわけです。
裏を返すと、効率よく進めたい人には噛み合わない作品でもあります。「早く先へ」という動機で遊ぶと、用意されているものの大半に触れないまま終わります。この作品を楽しめるかどうかは、腕前ではなく「立ち止まれるか」で決まると言ってよいでしょう。難易度で人を選ぶ作品は多くありますが、本作が選ぶのは遊ぶ姿勢のほうです。
「短い」という評価について、具体的な目安を挙げておきます。実績「スピード命(2時間以内にゲームを完了する)」が存在し、達成率は2.6%(2026年8月時点)。2時間で走り抜けることが速攻として成立する規模ということです。
一方で収集は決して軽くありません。
| 実績 | 条件 | 達成率 |
|---|---|---|
| ニャロディ | 全ての楽譜をMorusqueに渡す | 20.6% |
| 猫の印 | バッジを全て集める | 5.5% |
| なわばり | 全チャプターでひっかく | 4.4% |
「なわばり」は特定の場所を回る収集ではなく、「全12章それぞれで爪を研ぐ」という条件です。1つの章で忘れると、その周回では埋まりません。達成率4.4%という数字は、難しさではなく「途中で気づいても遅い」という性質を表しています。
短さと収集の重さが同居しているため、1周目は物語と雰囲気に浸り、2周目で収集を狙うという遊び方が素直です。章を選び直して回収できるので、初回に神経を使う必要はありません。
▶1. ボリュームは控えめ
クリアまでは6〜10時間程度と、ボリュームを重視する人にはやや短く感じられるかもしれません。ただし、その密度と余韻を考えれば、価格に見合った満足感は十分にあります。
▶2. アクションは控えめ
一部に追跡や軽い戦闘的要素はありますが、アクションの歯ごたえを求める作品ではありません。あくまで雰囲気と探索を味わうゲームとして捉えるのがよいでしょう。

- 猫が好きな人(最優先)
- 雰囲気重視のアドベンチャーを楽しみたい人
- 短時間で密度の高い体験を求める人
逆に、長時間のやり込みや歯ごたえのあるアクションを求める人には、物足りなく感じる可能性があります。

