FPSは数あれど、「ビルが崩れ、床が抜け、壁に穴が開く」ことを戦術の中心に据えた作品はそう多くありません。『THE FINALS』は、Battlefieldシリーズの開発者が在籍するEmbark Studiosが手がける基本プレイ無料のチームFPSで、徹底した環境破壊を最大の武器にした異色作です。

- 総合評価:やや好評(78/100)
- 最大の魅力:破壊が演出ではなく勝利条件に接続されている
- 独自性:「最後に持っていたチームが勝つ」ルールが生む逆転構造
- 気になる点:破壊ゆえの理不尽な負けが起こる
『THE FINALS』は、バーチャルな闘技場で行われる賞金獲得ゲームショウという設定の3人チーム制FPSです。ほぼすべての建造物を破壊できるという物理エンジンが特徴で、壁を爆破して新たなルートを作ったり、足場を崩して敵を落としたりと、破壊そのものが戦術になる唯一無二の体験を提供します。
2026年8月時点でSteamのレビューは27万件を超え、好評率78%。「他のFPSに飽きた」「派手な戦闘がしたい」という人に強く刺さる一作です。基本無料でありながら同時接続も1万人台を保っており、対戦相手には困りません。
▶1. すべてを破壊できる戦場
本作の核は、何といっても徹底した環境破壊です。壁や床、建物の構造そのものを破壊でき、戦況に応じて戦場の地形が刻々と変化します。「動かない遮蔽物」が存在しないため、定石が通用しない緊張感があります。
▶2. 破壊が「勝利条件」に接続されている
破壊表現を持つFPSは他にもありますが、本作が優れているのは、破壊が勝敗そのものに効く位置に置かれている点です。
基本モード「キャッシュアウト」は、金庫を解錠してキャッシュボックスを取り出し、キャッシュアウトステーションに接続し、タイマー終了時点で保持しているチームが賞金を得るという構造をしています。守る場所が固定されるからこそ、周囲を崩して進入路を減らすという行為に明確な価値が生まれます。
破壊が「派手な演出」で終わらず、守る側の設計作業になっている。ここが本作の設計の巧みさです。
▶3. 「最後に持っていたチームが勝つ」という逆転構造
もう一つ効いているのが、途中経過が評価されないことです。確保を9割進めていても、終了の瞬間に奪われれば0になります。
これは残酷なようでいて、試合を最後まで諦めさせない装置として機能しています。序盤に出遅れても終盤の一手で逆転できるため、消化試合が生まれにくい。同時に、2チームが殴り合っているところを第三のチームが奪う「漁夫の利」が常に成立するので、目の前の撃ち合いに勝つことと、試合に勝つことが別物になっています。
この構造が、破壊による混沌と噛み合って独特の緊張感を作っています。
▶4. モードごとに性格が大きく違う
常設モードは方向性がはっきり分かれています。
| モード | 勝利条件 |
|---|---|
| キャッシュアウト | タイマー終了時にステーションを保持していること |
| ポイントブレイク | 攻撃側は3つのグランドヴォールトを壊して1フェーズ、全3フェーズ突破。防衛側は攻撃側のリスポーンクレジットを枯渇させる |
| チームデスマッチ | $3,000先取で1ラウンド、2ラウンド先取で勝利 |
| パワーシフト | プラットフォームを制圧して前進させる。最大3人が乗ると最高速度 |
ポイントブレイクだけは撃破そのものに価値がある(防衛側はリスポーンを削るのが勝ち筋)ので、他モードの感覚が通用しません。パワーシフトも「乗る」ことが仕事なので、周囲で撃ち合っていると勝てない。同じゲームの中で要求される思考が切り替わるのは、遊びの幅として素直に良い部分です。
▶5. 3つのクラスとガジェットの戦術性
軽量・中量・重量の3クラスがあり、それぞれ機動力・耐久・使えるガジェットが異なります。回復、設置物、移動補助など多彩なガジェットを組み合わせ、チーム3人で役割を分担する戦術性が魅力です。
キャッシュボックスの運搬中は無防備になるため、誰が運び、誰が守るかという分担が自然に発生します。クラス構成が「なんとなくの好み」ではなく、チームとして機能するかどうかに直結する設計です。

▶6. ゲームショウ演出と高い完成度
実況付きのゲームショウという演出が、試合を盛り上げます。無料とは思えないグラフィックとサウンドの完成度も、Embark Studiosの実力を感じさせる部分です。
▶1. 破壊ゆえの「理不尽さ」
遮蔽が信用できない分、「気づいたら床が抜けて落とされた」「壁ごと爆破された」という理不尽な負け方も起こります。これを面白さと取るか、ストレスと取るかは人によって分かれます。
▶2. チーム連携前提の難しさ
3人チームの連携が前提のため、野良マッチでは噛み合わないこともあります。とくにキャッシュアウトは「確保前に周囲を崩しておく」といった準備が要るので、意思疎通のない野良では準備なしで接続が始まりがちです。ソロでの参加はやや不利になります。
▶3. 学ぶことが多く、入口が急
破壊の扱い、クラスとガジェット、モードごとに違う勝利条件——覚えることは決して少なくありません。撃ち合いの腕だけでは勝てない設計なので、FPSが上手い人ほど最初に戸惑うという逆転も起きます。
この入口の急さは開発側も認識しているようで、**シーズン11「GALAXY MASTERS」(2026年7月)**では新規向けの改善がまとまって入りました。
- ボットマッチの追加。AI相手にキャッシュアウトを練習でき、本番のPvPに入る前に基本モードの流れを掴める
- 新規プレイヤー体験(FTUE)の全面的な作り直し
- 近接戦闘のリワーク。防御とカウンタープレイの手段が加わり、攻守双方に明確な選択肢ができた
新アリーナ**「GALAXY ESTATES」**(郊外住宅地と商業施設、大規模インフラを組み合わせたレトロフューチャーな宇宙居住地)も追加されており、運営の更新は活発です。実際、シーズン11開始以降も週単位でアップデートが入り続けています。
さらに2026年8月には、Embarkが自社開発したアンチチート「Elytra」の導入が発表されました。基本無料のFPSはチート対策が寿命に直結するため、外部製品に頼らず自前で作りにいったという判断は、長期的に遊ぶかどうかの判断材料として大きいところです。
▶無料タイトルとしての課金圧
なお本作は基本無料ですが、進行そのものに課金が必要になる設計ではありません。World Tourという全モード横断の進行システムがあり、どのモードで遊んでもポイントが入り、負けても減らない形で無料報酬が配られます。課金要素は外見中心なので、「無料で遊べるが実質有料」という類の作りではない点は明記しておきます。

- 破壊や物理ギミックが好きな人
- 毎試合違う展開を楽しみたい人
- 撃ち合いの腕だけでなく、状況判断で勝ちたい人
- 友人と3人で連携プレイをしたい人
- 整然とした撃ち合いを好む競技志向の人
- 理不尽な展開が苦手な人
- 常にソロで遊びたい人
- 覚えることが少ないFPSを求める人

